気になる子どもへの理解と支援 ~明日から使えることばを育む関わり方~


「気になる子」と聞いたとき、あなたはどんなお子さんを思い浮かべるでしょうか?
目を閉じて、その子の様子をなるべく詳細に思い描いてみてください。

じっとしていられない子、話を聞いていない子、よく怒る子、目が合わない子などなど…

どうでしょう、みなさんの「気になる子」像はどんな子でしたか?
もしかしたら、今担任しているクラスの〇〇さん……と顔が浮かんできた方もいらっしゃるかもしれません。

このような「気になる子」の行動に対して、どのように支援すればいいのか、その“正解”が知りたいですよね。保育士である義理の妹もそう言っていました!

その気持ちは、私もよくわかります。
私自身も、臨床をはじめたばかりの頃、先輩に追いつきたくて何が“正解”かを必死で調べた経験があるからです。だけど「あれ?うまくいかないぞ」ってことが多かったのです…。
いったいなぜなのでしょうか?

それは、問題の本質を理解しないまま、状況の解決だけをしようとしていたからです。

「じっとしていられない」というひとつの行動に対しても、様々な原因が考えられます。

姿勢を保つことが難しい、体が勝手に動く(チック症の症状など)、上手くことばで説明できないから行動する、心配なことがあってそわそわする、はたまた、気になるおもちゃが目の前にあって取りに行きたいのかもしれません。

保育の中で原因を一発で当てることはなかなか難しいと思います。(僕はできません…)

「これが原因だ!」と断定せず、まずは思いつくままに「原因かもしれないこと」をあげていくことが大切だと思います。
行動の裏側にある原因(仮)に対して、“対応案”を考え、検証していくことが子どもを理解する近道になると思います。

はやる気持ちを抑えて一旦立ち止まり、そしてなるべくたくさん原因と対応策を考えてみてください。

明日から使える ことばに関する対応案<3選>

上記の考えを前提にした上で、たくさんの案の中から、明日から使えそうなことばに関する“対応案”3 選をご紹介します。

① ゆっくり、はっきり話す

当たり前のようですが、これがなかなか難しいものです。

子どもは音声を処理し理解する機能が大人よりも未熟なため、次々と音が入ってくると混乱をしてしまいます。初心者向けの英会話の先生を思い浮かべながら、ゆっくり、はっきり、大げさにお話しするくらいが丁度よいかもしれません。

一度自分と子どもとのやり取りを録画や録音し、聞いてみることをおすすめします!

実際に私が息子(0 歳)へ話しかけている動画を見たときは、その発話の速さに顔を覆いたくなる思いでした…。

② わかりやすい単語をつかい、短文で話す

「タオルをかけたら、靴を履いて出発するよ」であれば、「タオルをかけるよ」「靴をはくよ」「行くよー」とひとつずつ短文に分けると、理解しやすくなります。特に熟語は難しいので、頭をフル回転して簡単なことばになおしてあげることをおすすめします。先生が話していることばの意味を自分で理解することができた経験は、子どもの自信へとつながっていきます!

③ 目で見てわかる手掛かりを使って話す

「聞くだけで難しければ、見せながら!」と言ってもよいほど、視覚情報は物事を理解する手助けをしてくれます。「タオルをかけてね」と言いながらタオル(実物)を渡したり、絵や写真などを見せたりすることもよいでしょう。「ここに立ってね」と伝えたいときは、「ここ」「そこ」など抽象的な表現だと分かりづらいので、テープを張って「テープに足トン」など、視覚的な手掛かりを生み出してしまうのもひとつの手でしょう。

いかがでしたでしょうか?
「知ってるよ!」と思った方は引き続き、「そうなんだ!」と思った方は明日から、ぜひ心掛けてみてください。

ことばを育む関わり方のポイント<応用編>

応用編として、普段の療育の中で私が心掛けている「ことばを育む関わり方」のポイントを2 つご紹介したいと思います。上記であげた“対応案”と共に、日常生活の中でことばの理解を“広げていく”イメージです。

① ことばをくっつける声掛け

子どもが車を見て、「あ、くるま!」と教えてくれたときには、「わー、赤いくるまだったね」「大きくて、かっこいいね」「ブーンって、走ってるね」のように、「くるま」の色や大きさ、様子などをことばにして伝えることで、“ことばのネットワーク(単語と単語の意味のつながり)”をひろげていけるように意識をしています。 また、“しっかり聞いているよ”という姿勢は、子どものことばのやり取りを楽しむ心を育みます。

② 気持ちを代わりにことばにする

気持ちは「くるま」のような実物があるものと異なり、抽象的なものです。どのように表現してよいかわからず、泣く、叩くなどの行動につながることもあるでしょう。

「嬉しいね」「やったね」「いやだったね」「びっくりしたね」「痛かったね」など、感情を言語化し、表現の仕方を伝えることで、気持ちが落ち着いたり、伝え方を学んだりすることができます。

さいごに……

子どもが成長するにつれて、困り感はどんどん変化していきます。うまくいっていた方法に「あれ?」と思うことがきっとあるでしょう。そんなときは“原因(仮)”と“対応案”を書きだして検証してみてください。保育の中ではひとりの子どもにかける時間が限られていると思います。「無理せず」「できる範囲で」をキーワードに、明日からも子どもの笑顔の近くで、お互いに頑張りましょう!!

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執筆者プロフィール

 
中野区療育センターゆめなりあ
言語聴覚士 関口 裕昭
 
埼玉県生まれ。高校生の時に発達性ディスレクシアと判定。現在は言語聴覚士として中野区の療育センターに勤め、個別療育、保育所等訪問事業に携わっている。学校、保育園、福祉施設などで、実体験をもとに当事者の視点と支援者の視点を掛け合わせた講演活動を行っている。

    
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