事故防止の基本活動~ヒヤリハットを事故にしないためにできること~

コドモンカレッジでは、安全管理・リスクマネジメントをテーマにオンライン研修「保育所における事故発生の分析と事故防止の基本活動 ~事故はなぜ起きるのか、同じ事故を二度と起こさないためにできること~」を開催いたしました。

大阪大学大学院 人間科学研究科 安全行動学研究分野 特任研究員 岡 真裕美先生に、保育所における過去の事故と、事故予防の基本活動についてお話しいただきました。(見逃し配信はこちら

本ページでは、オンライン研修参加者から挙がった岡先生への質問とその回答をご覧いただけます。

施設管理者の方はもちろん、日々保育のなかでヒヤリハットに接する機会の多い保育者のみなさまもぜひご確認ください。

Q&A

 
岡先生に、保育者の方からの質問へご回答いただきました。

Q

ヒヤリハットの報告書で「以降は気を付けます」と個人の努力で終わらせずに、さまざまな視点から分析して「変えられるものは変える」ことが大切だということですが、実際の園でのそうした変更の例をご存じでしたら教えてください。どういうヒヤリハットがどういった改善につながったのかを知りたいです。

A

保育施設の改善例として、私がお聞きした例の一部を挙げさせていただきます。

・園内にいつも子どもがぶつかる場所があって不思議に思っていたが、「チャイルドビジョン」を使って職員で動線を確認してみたら、子どもにとっては見えにくい場所であったことが分かり、ぶつかやすい部分を目立出せるとともにカバーを付けた。

・いつも転ぶ園児がおり、観察するとサイズの合っていない大きめの靴を履いていたため、サイズの合った靴を履かせてほしいと保護者へ連絡した。

・水遊びの際、足ふきタオル(古タオル)で滑って園児が転びそうになっていたため、足ふきマットの下に滑り止めを敷いた。

・行事で出したポップコーンに含まれているコーンの皮(茶色い部分)が喉に張り付き、窒息しそうになった幼児がおり、背中を叩いて吐き出させ無事だったが、施設内で情報共有するともに、ポップコーンも危険であることを周知し、それ以降のポップコーンの提供は検討の上で判断するとした。

・長年の伝統で年末に餅つきをして子どもたちに食べさせていたが、危険だと聞いて餅つきのみ実施し、おこわを食べさせることにした。(餅の誤嚥によるヒヤリハットはこれまでなかった)

・安全装置が義務となる以前のことだが、コミュニケーションの行き違いから、バスに園児を取り残した事案が発生した。幸い園児は異常なしであったが、バスを使う時は責任者を一人決め、その責任者が必ず最後にバス内を確認するようにした。

Q

ヒヤリハットは、事故を未然に防げた成功例として職員に周知し、小さなことでも報告をあげてもらうとよいということでしたが、職員による「安全意識」の差がかなり大きいように感じています。この「安全意識の差」を埋めるためにできることがあれば教えてください。

A

周りから見ればとても危険な場面だったのに、関わった本人はケロッとして、周りをドキドキさせたりイライラさせたりすることもあるかと思います。

同じ安全研修を全職員で受講して、知識の差をなくし、危険予知の意識を高めることが効果的だと思いますが、園の都合でなかなか難しいかもしれません。

日常の保育であれば、ベテランの先生の方から、「私、バタバタしてて(鈍くて/目悪くなってきて、などなんでも…)ヒヤリハットに気づいてない時があると思うから、その時は遠慮なく指摘してね!」と言ったり、「お互いヒヤリハットに気づいてない時があると思うから、その時は、気づいた人が”今の危なかったよ”って声を掛け合おう!」と言って、気軽に言い合える環境を作れればと思います。

自分ができていなかったことを指摘されるのは嫌なものなので、「よくあるよね」「私もやってしまうわ」「分かる~」といったような言葉を交えて嫌味にならない言い方、個人攻撃にならない言い方で安全意識を高めてくださればと思います。

Q

施設設備については、「慣れに注意、はじめてそこに来た人の視点で見る」ということで、例として隙間、溝、ネット、遊具、ため池などが挙げられていましたが、このなかで室内にありそうなのは「隙間」だけでした。室内を点検するときのポイントがほかにあれば教えてください。

A

園によって間取りや内装、物の配置、保育方針など様々なため、私が「ここに注意!」とは断言しづらく、基本的にはその園の皆さまでチェックし合っていただきたいのですが、研修の中でお伝えしなかった例で言えば…

・洗剤、薬品、消毒用アルコール等の危険物が園児の目の高さにある、園児の手の届くところにある。

・老朽化しているもの、年代物の遊具やおもちゃ→見た目は大丈夫でも中が傷んでいる場合あり。防球ネットや体育館のキャットウォークなどが倒れてきた例もあります。

・木製の逆上がり補助具やすのこ、フローリング等のササクレ→普通に使用しているだけでケガをします。上靴で歩いてチェックするだけでは分かりません。

・「なぜか定位置になっているから漫然とそこに置いている物」「処分してもよいが決断する人がおらず置いている物」「子どもが近寄る可能性がある場所に置いてある大きな物」→死角や落下、転倒の危険を作り出しているかもしれません。柵に立てかけてあった50kgの子ども用プールが倒れて、園児が亡くなった事例もあります。

まだまだあると思いますので、ぜひ園内を子どもの目線で回って見つけてみてください

見逃し配信のご案内

 
安全管理・リスクマネジメントをテーマにオンライン研修「保育所における事故発生の分析と事故防止の基本活動 ~事故はなぜ起きるのか、同じ事故を二度と起こさないためにできること~」は、コドモンカレッジにて見逃し配信でご視聴いただけます。
 
研修では、令和3年における教育・保育施設での事故報告の集計、事故がなぜ起きたのかを実際の事故と現場の状況をふり返った共有、「チャイルドビジョン」を使った大人と子どもの見え方の違いの実践紹介などについてお話しいただきました。
 
見逃し配信> 「保育所における事故発生の分析と事故防止の基本活動 ~事故はなぜ起きるのか、同じ事故を二度と起こさないためにできること~
 
今後もさまざまな研修を予定しております。直近のライブ研修一覧はこちら>https://college.codmon.com/seminar/
 

コドモンカレッジについて


コドモンカレッジでは、現場で働く保育者の資質や専門性向上を目的とした保育研修を毎月定期開催しており、累計5,000名以上の方にご視聴いただいております。(2023年4月時点)

当日ご参加いただけない方でも、オンライン研修の見逃し配信や、いつでも好きな時間に学べる研修動画も公開しております。
https://college.codmon.com/

    
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