【園内研修テーマ】保育士のハラスメントとは?

保育士の退職理由としてもっとも多いのは、「職場の人間関係」だと言われています。平成30年度東京都保育士実態調査報告書によると、過去に保育士として就業した方の退職理由で「職場の人間関係」と回答された割合は33.5%。正規職員に絞ると、39.2%にものぼります。
こうした問題の解決に必要なのが、ハラスメント研修です。
ハラスメントとは、本人の意思に関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、おびやかしたりすることです。
ハラスメントが起きると、保育園内の風通しが悪くなり、保育士間の連携がしづらくなることはすぐに想像できるのではないでしょうか?
ハラスメントは、ひとりが知っているだけでは防止することができません。特に、新人保育士とベテラン保育士では、指導や言葉の認識のずれが起きやすい傾向にあります。そのため、新人保育士から園長まで、保育園全体が研修で知っておくとよいでしょう。
2022年4月よりパワーハラスメント防止措置がすべての事業主に義務化されました。ハラスメント研修を実施することは、「パワハラ防止指針」*にて示された「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」にあたります。
そこで今回は、ハラスメント研修の実施を考えている方のために、ハラスメントの種類や具体的な研修の内容についてご紹介します。
保育現場での例も交えて、分かりやすくハラスメント研修の内容を紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
*パワハラ防止指針……令和2年1月15日厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針」のこと
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ハラスメントの種類
先述したとおり、ハラスメントとは相手に不快感や不利益を与えたり、尊厳を傷つけたりする行為の総称です。
種類はさまざまありますが、ここでは保育現場で知っておきたい6種類のハラスメントをご紹介します。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワハラは、職場なのでの優越的な関係に基づき、業務の範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与えることを指します。
たとえば、有給を取りたいことを園長や主任に相談した際に、「ほかの人のことを考えて」「休みがあると思わないでほしい」と言われることなどがパワハラにあたります。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクハラは、相手が嫌がっているにもかかわらず、性的な言動を行うことです。男性から女性に対して行われる場合が多いですが、異性間だけではなく同性間の言動もセクシュアルハラスメントにあたります。「性的」に恋愛や結婚、出産に関することが含まれるという認識なく、セクハラにあたる発言につながることもあります。
たとえば、園長からの「結婚していないと、子どもを育てる親の気持ちが分からないんだよね」という言動。これも立派なセクシュアルハラスメントです。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラハラとは、言動や嫌がらせにより、精神的な苦痛を与えることを指します。パワーハラスメントとは違い、立場や職権は関係ないため、同僚や部下から起こる場合もあります。
意見をことごとく否定したり、わざと対応できない業務の依頼をしたりといったことがモラルハラスメントにあたります。加害者に自覚がない場合が多く、言葉や態度など目に見えない行為で相手を追いつめるため、周囲からは分かりづらい傾向があります。
たとえば、保育の話し合いの場で発言した際に「子どもを産んだ経験のない人には分からない」と意見を否定されることや、「あなたの育ち方じゃ保育をされる子どもがかわいそう」などの人格を否定するような発言がモラルハラスメントにあたります。
ジェンダーハラスメント
LGBTという言葉が広く認知される世の中になりつつありますが、まだ以前の価値観に囚われている人も多いのが現状です。ジェンダーハラスメントとは「男だったら」「女だったら」と性別を基に強要させる言動・行動のことを指します。
たとえば、保育士は女性の仕事だから男性は採用しないなどの条件を設定したり、公言することなどがあげられます。
セカンドハラスメント
セカンドハラスメントとは、ハラスメントの被害者が声を上げることで起きるハラスメントです。勇気を出して告発したにも関わらず、「被害にあうほうも悪いのでは」などの不適切な言動や、嫌がらせを受けたりするなどの二次被害のことを指します。
たとえば、主任保育士からパワハラを受け園長に報告したところ、「そんなのに耐えられないならやめたほうがいい」と言われることなどがセカンドハラスメントにあたります。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメントとは、出産や育児などの子育てに関する差別的な言動をされることです。
たとえば、認められた制度である産休を取得していることに対しての、「産休している人はもういらない」「産休なんて迷惑だ」などといった差別的な言動はマタニティハラスメントです。
参照:ハラスメントの定義/厚生労働省
ハラスメント研修の内容
ハラスメント研修は、教える内容が多くあるため自園に合ったポイントを絞ると教えやすくなります。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントを中心に、自園で起こりうるハラスメントはなにかを考えたうえで研修の内容を検討しましょう。
パワーハラスメントにおいては、「パワーハラスメント」と「指導」の境目と正しい指導方法を研修で伝えることが重要です。
ハラスメントになることを過剰に警戒するあまり、必要なコミュニケーションや指導ができなくなるようでは困ります。
正しい指導では、「育成」「改善」「目的」「配慮」意識することがポイントです。
ハラスメントはこの4つのポイントを意識できず自分の思いだけを伝えてしまうときに起きてしまいます。特に「配慮」がされているかどうかを意識することが大切です。
研修では、このポイントを意識して実際にロールプレイングをするとより効果があるでしょう。
また実例をあげて説明することも指導のポイントのひとつです。実例を紹介することで具体的にイメージしやすく、より理解が深まるでしょう。
「わざわざ説明しなくても相手は分かってくれるだろう」「これぐらいのことは許されるだろう」という思いを減らすことが大切です。
以下は管理監督者向けと一般従業員向けの研修内容です。
管理監督者向け研修
・パワーハラスメントとは何か(定義・行為類型)を確認する
・パワーハラスメントの社会的な現状を様々なデータを基に認識する
・パワーハラスメントの行為者、会社の責任について確認する
・パワーハラスメントの具体事例を確認し、パワーハラスメントと業務上の指導との違いを認識する
・パワーハラスメントの予防方法を認識する
・パワーハラスメントに関係する自社のルール(規定・相談窓口など)を確認する
・トップメッセージ**
一般従業員向け研修
・パワーハラスメントとは何か(定義・行為類型)を認識する
・パワーハラスメントが与える影響について認識する
・パワーハラスメントの行為者、会社の責任について認識する
・パワーハラスメントの具体事例を確認し、パワーハラスメントと業務上の指導との違いを認識する
・パワーハラスメントの予防方法を認識する
・パワーハラスメントに関係する自社のルール(規定、相談窓口など)を確認する
・トップメッセージ**
出典:パワーハラスメント対策導入マニュアル/厚生労働省
**トップメッセージ……組織のトップが職場のパワーハラスメントをなくすべきであると、方針を明確に示すもの
これをベースに、会社を「保育園」に置き換え、園内で起こりそうな具体事例を交えて、職員みんなに伝わる研修内容を組み立ててみてください。
まとめ
安定した保育をするためには、働きやすい環境づくりが必要です。働きやすい環境づくりのひとつとして、ハラスメント対策があります。
ハラスメントはひとりが意識しても対策にはなりません。ハラスメントをなくしていくためには、保育園全体で取り組む必要があります。ぜひ定期的にハラスメント研修を実施して、保育士の個々の意識をあげ、よりよい職場の人間関係、働きやすい環境づくりを行っていきましょう。
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