子どもの生活リズムを整える午睡と活動のポイント

コドモンカレッジでは、オンライン研修「子どもの生活リズムを整える 〜『食べて、動いて、よく寝よう!』運動のススメ〜」を開催いたしました。
長年子どもの生活リズムや運動量の向上のために尽力されている早稲田大学 人間科学学術院 教授 前橋 明先生に、子どもの生活リズムを整えるためのポイント、園や家庭で実践できる運動についてお話しいただきました。(見逃し配信はこちら)
本ページでは、研修参加者から挙がった前橋先生への質問とその回答をご覧いただけます。
子どもの睡眠や食事に関して悩んでいる方は、ぜひご参考にしてください。
Q
午睡中になかなか寝てくれない子どもがいるときの対処法はありますか?
A
一人で入眠できない子は、たとえ3歳・4歳児であっても、心地よく入眠できるように、そばについて、頭や額を撫でながら、小さな声で会話をしながら、あわせて背中や腕を軽くトントンして安心して眠れる環境をつくります。急かさず、真心を込めて続けると1週間くらいで自ら入眠できるようになります。0歳児であっても「早く寝て」と思いながらトントンするとぐずぐずいってなかなか寝ついてくれませんから、幼い子であっても「気持ちよく眠ってね」の優しさと真心が必須です。
また、眠りに必要とされるのは、①静けさ、②やすらぎ、③綺麗な空気と、導入は④暗さです。
なかなか寝てくれない子どもの原因を考えると、音や声でザワザワしていれば、静かな環境にすることを、明るすぎる場合は、カーテンを閉めて暗くすることを、食事後で昼ごはんの匂いが残っているのであれば食事を早めに終える工夫や部屋の換気をしてみるのはいかがでしょうか。
午睡は、夜間の睡眠とは違い、午前中の活動による脳温を下げての疲労の回復、情報の整理、記憶の定着が主な目的のため、時には眠りにつかなくても目を瞑って横になっているだけでもよいのです。もし、どうしても眠りにつけたい場合は、室内であれば抱きかかえての揺れを与えるとよいと思います。
午睡中に眠れないということは、朝の活動量の少なさ、あるいは、朝の陽光を浴びていないことが関係している可能性もあります。朝も太陽光を浴び、できれば外でおもいっきりからだを動かす時間をつくりましょう。
Q
午睡の時間を減らしてほしいと要望をいただくこともあるのですが、適正な午睡時間はどのくらいでしょうか?
A
午睡時間は年齢によって異なりますが、目安として0歳乳児は1時間~2時間半、1・2歳児は2時間前後、3歳以上児は1時間半~2時間弱、年長児は1時間~1時間半を目安にされている園は多いでしょう。
午睡は、午前中に活動したことで、心身の疲労、とくに大脳の疲労を回復させる、睡眠中に見聞きした情報を脳で整理する、学んだ記憶を定着させるために必要です。そのため、眠らなくても、目を瞑って休んで脳温を下げていくことに意義があります。
しかし、午睡が長すぎると、夜間の睡眠にネガティブな影響があるかもしれません。そのため、午睡は15時までには起きるようにした方がよいでしょう。一日で最も体温が高まる子どものゴールデンタイムである15時から17時には、外あそびで身体活動量を高めることができ、結果、体力もついてきます。したがって、昼食後の13時頃から休み、14時半〜15時頃までには起こしたいものです。
要するに、午睡は朝の活動で高まった脳温を下げる役割があるため、幼児が眠気を感じているようであれば寝かせてあげ、体力がついていくると寝かせなくても大丈夫になってきますが、脳温を下げるために静かにからだを休めるか、静的な活動に誘い、15時までには起きるようにすることをおすすめします。
Q
「夜、子どもがなかなか寝つかない」と悩む保護者へのアドバイスがあれば教えてください。
A
3つ大切なことをお話します。
1つは、「お子さんが入眠しやすい環境」にしているかどうかです。
まず、お子さんが入眠しやすい環境を、保護者の方が用意できているかを見直してみましょう。お子さんがスムーズに入眠するためには、部屋の灯りを落とし、テレビやビデオのスイッチを切って音は消し、静かで落ち着ける環境を用意してあげることが第一です。部屋の明かりやテレビを付けていたり、家事をして音を立てたりしながら「早く寝なさい」「どうして寝れないの?」と言っても、子どもたちは眠れません。子どもたちにとって寝やすい環境が用意されていなければ、うまく寝つくことができないのも無理はありません。子どもたちが寝やすい環境を、保護者の方が用意してあげることが大切です。
また、お子さんが寝る時刻になったら、家中の灯りや音は一旦すべて消して、保護者の方もお子さんといっしょに寝床に入ることもよい方法です。
お子さんの隣でストーリーテリングをしたり、1日の楽しかったことを振り返ったり、聞いたりしながら、お子さんが寝つくのを待ちましょう。テレビや仕事、家事など、保護者の方がしたいことは、お子さんが寝静まった後にできるようにするとよいですね。
2つ目は、「寝床に入る時刻」です。
幼児さんの心身の健やかな成長のためには、幼児であれば、夜間に10時間以上の睡眠時間を確保することをおすすめします。夜間に10時間以上の睡眠時間を確保するためには、21時までには寝かせてあげたいものです。
21時にお子さんを寝させてあげるためには、遅くとも30分前の20時30分までには寝床に入り、部屋を暗くして静かな環境でストーリーテリング等が始められるようにするとよいでしょう。寝る前に絵本の読み聞かせをする方もいらっしゃいますが、絵本を読むためには部屋を明るくしなければなりません。部屋が明るいと、子どもたちの心とからだが寝るモードに切り替わらないので、20時30分頃までには絵本の読み聞かせを終了させ、20時30分~21時までの30分間は部屋を暗くした状態で過ごせるとよいですね。
3つ目は、「日中の運動」です。
保護者の方がお子さんが寝やすい環境をいくら用意しても、お子さんのからだが疲れた状態にないと寝つくことは難しいです。そこで大切なのは日中の運動です。日中にめいっぱいからだを動かして遊ぶことで、子どもたちは心地よい疲労感を得て、夜もぐっすり眠ることができます。
特に、園庭や公園での陽光を浴びながらの外遊びがおすすめです。保護者の方の時間が許すときは、園庭開放を利用したり、公園に足を運んだりして、積極的にお子さんを外で遊ばせてあげてほしいです。
また未就園児の場合は、保護者が午前と午後の2回の運動あそびを重視し、汗が出るほどのからだを動かす時間を確保されるとよいでしょう。親としてできうることは、公園に行ったり、家の前で遊んだり等して、少しの時間でも外で遊ぶ習慣をもたせることが大切です。親子でいっしょに汗をかくぐらい遊び込むことで、夜にはやめの就寝につなげることができます。公園の遊具で遊んだり、ボールやとびなわ等の用具を使って遊んだり、散歩をしながら自然を見つけたり、追いかけっこをしたりする等、親子で行動することが楽しく有効です。
Q
おすすめの「クワイエットタイム(脳を休憩させる静かな時間)」の方法があれば教えてください。
A
おすすめのクワイエットタイムとしては、絵本や折り紙、ぬりえ、パズル等、静かに過ごせるものが良いと考えます。音がでる玩具やからだを動かすあそびは適していません。
また、クワイエットタイムは、年長になり体力がついてくれば寝なくてもいいので、脳を休める静かに過ごす時間として考えてください。
ときに、保育者がする仕事(使った色鉛筆を削る、色紙や紙などの整頓など)で、その子の年齢でもできる手伝いをしてもらい、人の役に立つ喜びを感じてもらえる機会にもしてよいでしょう。
Q
朝起きたら太陽の光を浴びたり、太陽の下での活動を積極的に取り入れるとよいのでしょうが、室内でもできることはありますか?
A
太陽の光を直接からだに浴びることが最も理想的ですが、戸外に出れず、直接、太陽の光を浴びることができない場合でも、まず室内で窓を開けて新鮮な空気を取り入れて、からだに外気にふれされることで、心がリフレッシュできるだけでなく、自律神経の機能を促進させます。また、室内でも窓際に移動し、太陽の光を浴びることができれば、なおさらよいでしょう。
室内でリフレッシュできるレクリエーション活動や運動あそびで汗をかき、自律神経の機能を向上させる効果は期待できます。したがって、室内においても、身体活動量を高める軽い運動をおすすめします。実践例としては、曲を流してリズム体操でからだを動かします。また、親子でお互いのからだを使ってできるようなふれあい体操や、朝食の用意や片づけ、掃除、雑巾がけ、洗濯物干し等もよい活動です。日常生活をすべて運動と考えると、室内であっても身体活動量を増やすことは容易にできそうです。
見逃し配信のご案内
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見逃し配信> 「子どもの生活リズムを整える 〜『食べて、動いて、よく寝よう!』運動のススメ〜」
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