保育士のキャリアアップ研修とは?


1.キャリアアップ研修とは?

(1)保育士のキャリアアップ研修の概要


子どもやその保護者たちの子育てを取り巻く環境が大きく変化し、保育施設や保育士に求められる役割も多様化しています。保育士には子どもや保護者の日常の保育はもとより、さらに高度な専門性が求められるようになっているのが現状です。
 
日々の保育士としての保育やその他の業務に加え研修機会の充実によって、その専門性を向上させていくことが重要となっています。
 
保育現場において、園長、主任保育士が主に保育園のマネジメントなどを担い、初任保育士から中堅保育士までの職員が日常の保育から保護者の対応など多様な課題への対応をし、先輩である保育士がリーダー的な役割を担いながら日常の保育の場面などで若手の指導などを行っています。
 
同じ保育園内であっても、こうした職務内容に応じた専門性の向上を図るための研修機会の充実が特に重要な課題となっています。
 
その研修の一環として「保育士等キャリアアップ研修」が行われています。この研修は、研修分野や対象者を細分化し、現在のキャリアにフィットした研修を行うことで職務内容に応じた専門性や保育技術の向上を目的としています。
 
 

2.保育士のキャリアアップ研修の分野別の内容

(1)専門分野別研修

①乳児保育

乳児保育に関する理解を深め、乳幼児保育の意義を考え個々の子どもの成長にあった関わりを行いながら、日常保育の中で子どもの成長発達に応じた環境を作り出せるようにします。またそれに応じ、保育内容の充実に努め保育だけではなく、指導計画、記録及び評価への技能も高めます。そして、他の保育士に乳児保育に関する適切な助言及び指導ができる実践的な能力を身に付けていきます。


②幼児保育

幼児教育に関する理解を深め、幼児教育の意義を考えながら個々の子どもの発達や状態にあった対応を考えた保育内容や環境を作り出します。それに応じ、保育内容の充実だけではなく指導計画、記録及び評価への技能も高め、他の保育士に乳児保育に関する適切な助言及び指導ができる実践的な能力を身に付けていきます。また、幼児教育においては小学校との接続を見据えた指導の保育ができるよう理解を深めます。


③障害児保育

障害の理解を深め、障害児保育の環境を整えるとともに、障害児の発達の状態に応じた保育や援助が行うことができる力を養います。また家庭への援助及び関係機関と連携しながら、それの元となる障害児保育の指導計画、記録及び評価を適切に行えるようにします。他の保育士に障害児保育に関する適切な助言や指導ができるよう、実践的な能力を身に付けます。


④食育・アレルギー対応

食育及びアレルギーに対する理解を深め、適切な食育の計画やアレルギーの対応ができる力や専門性を高めます。それに必要な栄養に関する基礎知識、食育計画の作成と活用を行いながら日々の食育に関われるように、アレルギー疾患の理解や知識を養います。そして、他の保育士に食育・アレルギー対応に関する適切な助言及び指導ができるよう実践的な能力を身につけます。また保育施設における食事の提供ガイドライン及び、保育施設におけるアレルギー対応ガイドラインについて学びます。

⑤保健衛生・安全対策

保健衛生及び安全対策に関する理解を深め、適切な保育計画や適切な安全対策を講じることができる力を養います。そのための、保健計画の作成と活用や事故防止及び健康安全管理の方法を学び、そのほかにも感染症対策ガイドラインや保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドラインについても適切な処置ができるよう知識を高めます。また、教育・保育施設などにおける事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドラインについても身に着けることで日常からの安全対策に対する意識を持ち、他の保育士に保健衛生・安全 対策に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付けます。

⑥保護者支援・子育て支援

保護者支援・子育て支援に関する理解を深め、保護者および子育て支援の意義を考えながら適切な支援を行う力を養います。保護者に対する相談援助や、地域における子育て支援などにも援助を行いながら虐待予防などにも勤めることができる専門性を高めます。他の保育士に保護者支援、子育て支援に関する適切な助言及び指導ができるよう実践的な能力を身に付けます。また関係機関との連携を図り、地域資源の活用を行うことができるよう地域への理解も深めます。
 
 

(2)マネジメント研修

 
主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う立場に求められる役割と知識を理解します。そして、ミドルリーダーとして保育園の円滑な運営に必要なマネジメントを理解し、リーダーシップを持って保育の質を高め、保育園の運営に関わる力を養います。さらに現場を見ながら組織目標の設定や今後を見据えた人材育成と、職場を客観的に見る視点を培い働きやすい環境づくりができる、マネージメントリーダーの能力を身に付けます。

(3)保育実践研修

 
子どもに対する理解を深め、基本的な保育における環境構成や子どもとの関わり方を学びます。身体を使った遊びや音楽、物を使った遊び、言葉の発達など保育士が主体的に様々な遊びと環境を通じて、保育の展開を行うために必要な能力を身に付けます。


3.キャリアアップ研修の受講対象者

【専門分野別研修】

 
1乳児保育、2幼児教育、3障害児保育、4食育・アレルギー対応、 5保健衛生・安全対策、6保護者支援・子育て支援保育施設の保育現場において、各専門分野に関してリーダー的な役割を担う方が対象です。(当該役割を担うことが見込まれる方も含まれます。)

【マネジメント研修】

 
各分野におけるリーダー的な役割を担う者としての経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う方が対象です。(当該役割を担うことが見込まれる方も含まれます。)

【保育実践研修】

 
保育所等の保育現場における実習経験の少ない方や、滞在保育士などの長期間、保育施設の保育現場で保育を行っていない方が対象です。
 
 

4.処遇改善等加算について

 
処遇改善等加算とは、国が保育士確保を目的に作った取り組みです。ハードワークの割に賃金が安い保育士は早期離職しやすい傾向にあります。保育士の年収は、全職種の年収の平均額よりも149万円も低いことが分かっています。
 
この保育士が離職しやすい現状を踏まえ、2つの処遇改善を通し保育士確保を目的として打ち立てられたのが処遇改善等加算です。
 
給与の改善だけではなく給料が安定することによって、保育士の離職を防ぐことを目的としています。処遇改善等加算には二つの仕組みがあります。
 
 

【保育士の処遇改善加算等Ⅰ】

 
保育士の処遇改善加算等Ⅰは、①基礎分②賃金改善要件分③キャリアパス要件分の3つの要素によって賃金が支払われます。

①基礎分

平均経験年数によって賃金が上がる仕組みとなり給料の2%から最大12%までが加算されます。

②賃金改善要件分

以下のように経験年数により支払われる仕組みとなっています。平均経験年数が11年未満の場合…給料の一律6%平均経験年数が11年以上の場合…給料の一律7%賃金改善計画と、その実施報告が必要になってきます。

③キャリアパス分

賃金改善要件分のうちの2%がキャリアパス分。職員の役職や職務内容に応じた勤務条件と賃金システムの設定や職員の資質向上に向けた研修機会を確保した上で職員への周知が条件となってきます。
 
 

【処遇改善加算等Ⅱ】

 
処遇改善等加算Ⅱは、キャリアアップの体制を整え、さらに賃金の改善を行って保育士の確保を目的とています。金額と条件は以下のような体系となります。

●副主任保育士    月額4万円            

①経験年数おおむね7年以上

②職務分野別リーダーを経験

③別に定める研修を修了していること

④副主任保育士等としての発令



●専門リーダー    月額4万円

①経験年数おおむね7年以上

②職務分野別リーダーを経験

③別に定める研修を修了していること

④副主任保育士等としての発令       



●職務分野別リーダー 月額5千円                

①おおむね3年以上の経験年数を有すること

②「乳児保育」「幼児保育」「障害児保育」「食育・アレルギー」「保険衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」いずれかの分野を担当すること

③別に定める研修を修了していること

④職務分野別リーダーの発令



キャリアアップを図ることで、さらに給与などの改善ができる法制度が整ってきました。こちらを加味してもキャリアアップが重要視されていることがわかります。

5.まとめ

 
保育士は、保育の現場において専門的知識及び技術を身につけた上で保育が必要な乳幼児及び保護者に対する保育および対応が求められています。その専門性は日常から向上を図ることが必須とされており、そのために研修機会を充実させることが重要です。日々多忙な業務の中ですが、積極的に研修を受講する事で専門性を高め、日々の保育に生かしながら子どもたちや保護者が充実した日常が送れるように支援していくことが大切です。

    
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