【園内研修テーマ】保育士のメンタルヘルスケア

 
さまざまな職業のなかでも、保育士はとくにストレスが大きい職業といわれています。
子どもの命を預かる責任の重い仕事でありながら、業務量も多く、職員一人ひとりにかかる負担が大きいためです。
忙しい日々に追われ、自分自身のメンタルヘルスまで気が回らないという保育士の方もいるでしょう。
しかし仕事をするうえで、メンタルヘルスケアは大切な自己管理のひとつです。
今回は、保育士のメンタルヘルスケアについて、園内研修を実施するための方法と合わせて紹介いたします。
 

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メンタルヘルスとメンタルヘルスケア

 
メンタルヘルスとは、直訳すると「心の健康」を意味し、「精神的健康」「精神衛生」「精神保健」とも訳されています。
 
世界保健機関(WHO)は2007年に「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」と定義しており、近年では「精神的健康や心理的健康の回復」といったポジティブな意味合いでも使われることがあるようです。
 
メンタルヘルスが不調に陥ると、仕事のパフォーマンスの低下や、精神疾患、身体の不調につながるおそれがあります。
そこで必要とされているのが「メンタルヘルスケア」です。
1985年以降、国によるメンタルヘルスケア関連の施策が数々打ち出されています。しかし過労やストレスによる自殺といった事件が絶えず、2015年には労働安全衛生法を改正し、ストレスチェック制度を義務付けるようになりました。
課題点としては、ストレスチェック制度が義務付けられているのは「50人以上の労働者がいる事業所」なので、保育園では該当する園が少ないということです。
そのため保育園・法人は、国の制度にかかわらず、それぞれで職員のメンタルヘルスケアを実施する必要があるといえます。
園内研修でメンタルヘルスケアをテーマにし、保育士一人ひとりが自分のメンタルヘルスに意識を向けられるような土台づくりをしていきましょう。
 

保育士が抱えるストレス

 
人とのかかわりが重要な保育士は、心身ともに負担が大きくストレスを抱えやすい職業といわれています。
なかでも、以下の2点はとくに保育士のストレスになりやすい要因です。
 

➀職場の人間関係

保育士が抱える悩みのなかでも、多いのが「職場の人間関係」です。
先輩保育士や同僚との関係で悩んだり、保護者対応が上手くいかなかったりすることもあるでしょう。
また、園長をはじめとした上司からのパワハラなどを機に退職を考える保育士も少なくないようです。
職場の人間関係に悩みながらも、職場内で相談できないというフラストレーションがメンタルヘルスに影響を及ぼすといえます。
 

②保育業務

保育士は、個人が抱える業務量が多く多忙なイメージを持たれる職業のひとつです。
日々の保育以外にも、制作物や行事の準備、日誌や指導計画などの事務作業をこなし、役職によってはシフトの調整、後輩育成も抱えるため、保育士の業務は多岐にわたります。
 
子どもが好きで保育士になったはずなのに、日々の業務に追われて子どもと向き合う時間が足りないと思う保育士の方も少なくないでしょう。
業務量の多さから、勤務時間内に終わらず残業や持ち帰りの仕事が増えるという悪循環のなか、自己嫌悪に陥ることも珍しくありません。
 

メンタルヘルスケア研修の内容

 
では、園内研修でできる「メンタルヘルスケア研修」には、どのようなものがあるでしょうか?
ここでは「セルフケア研修」と「ラインケア研修」の2つをご紹介します。
 

セルフケア研修

 
セルフケア研修は、すべての職員が対象となります。
「セルフケア」とは自分で自分のメンタルをケアすることです。
この研修では自分の抱えるストレスの傾向を知り、コントロールする術を身につけることを目的としています。
では、園内研修でセルフケアについて学ぶ場合、具体的にどのような内容になるのでしょうか?
 

メンタルヘルスの基礎を学ぶ

 
セルフケアを実施するにあたり、まずメンタルヘルスについて知る必要があります。
メンタルヘルスとはなにか、保育士の受けやすいストレスやケアの必要性について知ることで、保育士本人が自分の不調や異変に気付き、早期に適切な対処をすることが可能です。
 

セルフチェックを行う

 
ストレスチェックなどの名目で、用紙に記入するセルフチェックを経験したことのある保育士の方も多いでしょう。
チェック項目やアンケート形式、自由記載など、用紙の形式はさまざまです。
悩みを文章に起こしたり、チェックすることで、自分自身が感じているストレスが明確になることもあります。
用紙を記入したあとに、管理職の保育士と振り返りを行うケースもあるようですが、主任や園長が目を通すため、本音を記入できないと感じている保育士の方もいるようです。
あくまで「セルフケア」を行うための園内研修ですので、ここでは本人以外が内容を知り得ることのないよう配慮してください。
 

セルフケア方法を知る

 
自分のストレスの傾向に対し、どのような対処方法が有効か知るところまで研修に含めることをおすすめします。
趣味を楽しむ時間をつくる、早寝早起きをするといったセルフケア方法が紹介されている記事もありますが、多忙な保育士にとって現実的ではないことは一目瞭然です。
できればレジリエンスについて学び、ストレスに柔軟に対応する力を身につけることがのぞましいでしょう。
 

ラインケア研修

 
ラインケア研修とは、管理職が保育士の心のケアを行うための研修のことです。
園長や主任保育士、リーダー保育士といった後輩を指導する立場の職員向けに実施されます。
 
ラインケアとは、上司にあたる職員が部下の「いつもと違う」姿をいち早く察し、相談の場を設けたり職場環境の改善に努めることをいいます。
メンタルヘルスマネジメントに含まれる研修のひとつでもあり、メンタルヘルスの基礎から学びことが一般的です。
園内研修でラインケア研修を実施する場合、どのような内容になるのでしょうか?
 

ラインケアを学ぶメリットとは?

 
ラインケア研修ではメンタル不調の兆しに気付くためのポイントや、それに気付いたときの初期対応を具体的に学ぶことができます。職員のメンタルヘルスの不調を早期に発見し、適切な対応をすることで離職を防ぐことが可能です。
また、普段から実践しておきたいメンタルの不調を防ぐための声かけの仕方やコミュニケーションのとり方、求職から復職へのサポート体制についても学ぶことができます。
 

メンタルヘルス、セルフケアの基礎を学ぶ

 
ラインケア研修ではまずメンタルヘルスやセルフケアに関する基礎知識を伝えましょう。
メンタルヘルス関連の制度や基礎知識を学んだうえで、日々の業務のなかで保育士のメンタルヘルスを気にかけ、それぞれに見合った対応をしていくことが求められます。
 

ラインケアの方法を学ぶ

 
ラインケアを実践するにあたり、今の職場環境をしっかり把握する必要があります。職場の設備備品の管理や衛生面でのストレスはないか、職場の保育士一人ひとりの抱える業務量や、業務のために必要な場所・時間・人材は確保できているか、上司がストレスの要因になっていないかなど、細かな部分に目を向けていきます。
 
現状を把握できたら、必要に応じて職場環境の改善をはかりますが、環境づくりに正解はありません。それぞれの管理職が各保育園に見合った方法で、保育士が働きやすい、メンタル不調を抱えにくい環境を作っていくことが重要です。
 
次に、保育士のメンタル不調やその兆しに気づくためのポイントと、気づいた場合に上司がすべき対応について学びます。演習形式などで実際にやってみてもよいでしょう。
このほか、日常から実践できる保育士とのコミュニケーションの工夫や、声かけのポイントについて学ぶケースもあります。管理職にあたる保育士が学んでおくことで、メンタルの異変に気づいたときだけでなく、普段からストレスを感じにくい環境づくりを意識できるでしょう。
 

休職者、復職者への対応

 
メンタル不調での休職者が出た場合、復帰することもまた当人にとって大きなストレスになり得ます。上司が休職者の復帰支援を学んでおくことで、安心して復帰できるだけでなく、ほかの休職者を出さないような環境づくりにつながるでしょう。
 

カウンセラーに話を聞いてもらう

 
メンタルヘルスケアの研修内容とは異なりますが、メンタルヘルス対策としてカウンセラーを呼ぶという方法もあります。実際に保育園で行われているメンタルヘルス対策のひとつです。
外部のカウンセラーと契約を結び、年に数回、保育士と1対1でカウンセリングをする機会を設けます。
ただ、保育士全員とカウンセリングを行う時間をつくることは難しい場合もあるでしょう。
その場合は、プロのカウンセラーのフォローを必要とする保育士がいたときなどに、利用するという方法もあります。
 
カウンセリングで話した内容は基本的には本人の許可なしに管理職に報告されることがないため、まわりに言えない悩みも気楽に相談することができるでしょう。
 
自分の抱えている問題をプロのカウンセラーに聞いてもらい、一緒に整理してもらうことで、メンタルヘルスケアができたと感じる保育士もいるようです。
費用の問題などもありますが、ときにはプロのカウンセラーに入ってもらうことで問題が解決するケースもあるでしょう。
 

気持ちよく働ける職場環境を目指しましょう

 
保育士が安定して働くには、メンタルヘルスのケアは必要不可欠です。
メンタルヘルスについての研修を取り入れることで、一人ひとりの保育士が自分自身と向き合うきっかけのひとつになります。
ストレスが減り、職場環境が改善することで、離職を防ぐこともできるでしょう。
メンタルヘルス対策を行うことが、自然と保育士が安定しては働くことのできる環境づくりに繋がっていくのです。
今後も必要に応じてメンタルヘルス研修を行い、保育士が安心して働くことのできる職場環境を目指しましょう。
 

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